ペアリングとは、中味に醸造家もホナタ／ヒルトに共通。故に味わいに共通する点が少なくないものですが、同時に試飲すると、より鮮明にそれを感じさせます。
中でも、「ここまで似てこの価格差？」と思わせる1本がソーヴィニヨン・ブラン。ホナタのフロルにほぼ相似形です。(ペアリングはホナタの半額未満)
フロルの特色は、その名の通り「(白い)花」の香に表れます。(これが並外れてアロマチック!!)
体躯のスケール、余韻の長さに相応の違いはあれど、価格差を加味すれば、ペアリングの費用対効果が際立ちます。(シラーも極優秀)

■ 生産者・産地概要
オーナーは、スクリーミング・イーグルと同じくスタン・クロエンケ -Stan Kroenke-。
同列の姉妹生産者としては、ホナタ -Jonata-(ボルドー＆ローヌ系)と、ザ・ヒルト -The Hilt-(ペアリングの上位版)がある。
カリフォルニアのブルゴーニュ系といえばソノマが知られるが、「潜在力はソノマを凌駕する」との声もある。その産地が、サンタ・バーバラ郡＞サンタ・リタ・ヒルズ地区(SRH)。イーグルのお膝元、ナパから400km以上も離れた先にヒルトの拠点はある。
オー・ボン・クリマ(ABC)等でも知られるよう、世界的なピノとシャルドネを輩出するサンタ・バーバラの優位性としては、かねてよりハングタイムの長さや、昼夜の寒暖差への言及が多かった。
(ABCはサンタ・マリア・ヴァレー地区)
その様な中、近年は舞台の中心がSRHに移りつつある。
理由の一端が、当地に特有の海洋性石灰質の存在。
局所的に白い石灰質が表土に露わとなる土地が点在する。(画像右参照)
「ミネラル感(minerality)」と密接な関係にある「テクスチャー(texture)」。その知覚は、石灰質の含有量にも左右されると伝えられ、とりわけファイン・ピノを語る上で、その需要度は一層と増す。
「土壌オタク」と呼ばれる醸造長のマット・ディーズはもちろん、カベルネ(スクリーミングイーグル)に続き、ブルゴーニュ品種においても世界最高峰を実現させるうえで、ヒルトのワインは、またとないテロワールから生み出される。

《ザ・ペアリング》 シャルドネ “サンタ・バーバラ”
ヒルト シャルドネの上位キュヴェに、“ジ・オールドガード”と“ザ・ヴァンガード”がある。二つのコンセプトは異なり、オールドガードはオーク香を控えめとしたクラシカルスタイル。一方のヴァンガードは、樽の香りと熟度ある果実感に特色付けられるモダンスタイル。
ペアリングのシャルドネは、ややヴァンガード寄りであり、甘やかさを美点とする南国果実の風味に、涼し気な黄色から緑の柑橘類のニュアンスも併せ持つ。ふくよか且つ生き生きとした果実感を持ち、サンタ・バーバラの「らしさ」が表されたシャルドネ。
■ アントニオ・ガローニ氏評
「ペアリングのポートフォリオにあって間違いなく滋味なワイン。果樹園の果物、カモミール、花々の香りにフレンチオークのタッチがバランス好く、酒肉はクリーミー。豊かな表現力を持つ魅力的なシャルドネであり、飲む者を引き付けるポイントが多々ある。」

《ザ・ペアリング》 ピノ・ノワール “サンタ・バーバラ”
■ アントニオ・ガローニ評
「この価格でここまで素晴らしいクオリティを提供してくれるピノは本当に珍しい。赤から紫にかかる甘やかなベリー類、バラの花びら、ラベンダー、スパイス香が初期より爆発的に開き、口蓋ではシルクのようなタンニンと勢いよく湧き上がるアロマが種々の要素を包み込む素晴らしいワイン。もしかしたら、最も価値のあるカリフォルニア・ピノかもしれない。」
【銘柄概要】不自然に大人びた酒質で無くとも、だからといってチャーミングを売りとするお子ちゃま味でも無し。オーク樽による香り付けなどデコレーションに頼ることなく、背伸びせずに果実が生来持つ「素」の美しさが引き立てられています。
ファイン・ピノの生命線、芳しいアロマに酸・甘のバランスに長ける1本であり、熟れたアメリカンチェリーやいちごの趣きを持つ赤果実のピュアなアロマが実に素敵。口中では明るい花々の香りから、当地の高級ピノにも共通する紅茶葉や薫香が続き、穏やかなタンニンから舌触りに喉越しも滑らか。アフターの性格は強いアタックに頼るものではなく、細く長く持続します。

《ザ・ペアリング》 シラー “サンタ・イネズ・ヴァレー”
温暖産地のそれとは一線を画す冷涼産地の通称「クールクライメットシラー」
適切な酸度がシラー本来の美質を引き立て、北部ローヌの秀逸なシラーに特色付けられる黒胡椒や燻製肉の香に、ピノノワールにも相通じるスミレのアロマを併せ持ちます。
口中における風味の豊かさも申し分なく、肌合い感のあるテクスチャー、ファインワインに伴われるべき「余韻の長さ」とそれを導く「多様な構成要素」は、例えば同価格帯のピノと比べては見出しがたい水準。過ぎたる熟度のシラーとは喉越しに疲弊感が残されますが、クールクライメット・シラーならではの淑やかな酸と肌理細やかなクラスターからはむしろ心地よさを覚え、出費に見合う質感を愉しませてくれます。
■ アントニオ・ガローニ氏評
「ペアリングのワインはいずれも素晴らしいが、時にシラーは最高の仕上がりを見せる。ペアリングのシラーは、原則的にホナタのエステイト・ヴィンヤードによる果実が使われ、ダークフルーツと黒胡椒にキダチハッカの含みを持ちつつ刺激的で滋味。品種の特性を十二分に発揮する。長いハングタイムにより生理的成熟を高めつつ、冷涼な気候である為、収穫が遅くとも快活な酸を兼ね備える。なんというワインであろう。」

《ザ・ペアリング》 ソーヴィニョン・ブラン カリフォルニア
■ナパ・ヴァレーであれば、10年を経ても厚い体躯を保つアイズリー ／ 味わい中間領域が膨らむレイルのジョージア ／ 柑橘類の風味に引き締まり感のあるルイス
■ソノマなら、オイリーでふくよかなピーター・マイケルのラプレミディ
これら第一級の評価を得る北カリフォルニア産ボルドー系白に対し、セントラルコーストから南カリフォルニアにかけて頂点にいるソーヴィニヨンブラン主体がホナタのフロル。
各種各様の持ち味が示される中、フロルには他に重ならぬ創造的な点があります。
そして、その美質を共有する銘柄がもう一つ。
ペアリングのソーヴィニヨン・ブランがそのワインです。
【味わい】 国内最大のカリフォルニアワイン限定合同試飲会でお披露目された際、見事なまでにアロマチックで「ホナタ フロルにほぼそのまま！」と面食らったものです。その後にもフロルとペアリングのSBを同時試飲しましたが、改めて「ここまで似て何故この価格差？」と首を傾げました。命名由来でもある「(白い)花」の香りに満ちるフロルに等しく、まるで柔らかな陽射しの中で春の花々に囲まれるような心地よいパフューム。