長年に亘りこつこつと収集し、愛蔵してきた紀州へら竿の一本ですが、今般、諸般の事情により断腸の想いで出品いたします。
【概説】
・文学や音楽の作品には、精神を集中して対峙してこそその真味を理解できるものと、気軽に接するだけでその味わいを感じられるものがありますが、これは紀州へら竿についても言えるように思います。
・後者を代表する竹竿としては、先に出品した五郎がその代表格ですが、ここに若駒を加えることも間違いではないでしょう。
・若駒は白漆による塗りを得意とし、ムラの生じやすいこの漆を施すにあたり、敢えて白さを抑制し、竹の地色に寄せるとともに、巻きの端は黒漆で縁どることで、非常になめらかで自然、それでいて印象的な意匠を実現しているのが特徴。
・本品「最上作 12.1尺 口巻 籐握り」はその白塗りではないものの、若駒の丁寧な仕事が如実に看取される一竿です。
・しっかりめの合わせ穂のため、繊細な釣り味に些か欠けるのは致し方ないものの、中式本調子という竹竿の中庸、手にやさしいその風合いは十分に愉しめます。
・個人的に、櫓聲や至峰、影舟などを使うには、それなりの気力の充実を要し、場合によっては重荷に感じることがありました。
・そんな時は本竿の出番、これが手元にあることで、今まで気持ち的にどれだけ救われたかわかりません。
・気軽に使うことができ、そして紀州へら竿の良さを知って頂くには最適な一本です。
【状態】
・竹竿において最も注視すべき口割れのないのはもちろん、穂先・穂持の反りもなく、込み・胴漆の状態も良好です。
・現状、元上用の口栓がややきつく、玉口に挿した時に段差の部分まで入りきらず、2mmほど外に残ります。
・これまでの使用回数自体が僅少なことに加え、当方几帳面な性格ゆえ竿は至極丁寧に扱い、釣りを終えた際には家から持参した竿拭き用のきれいな絞りタオルで汚れを落として収納し、帰宅後すぐに展開して一晩室内干しした上、居室にて保管していたので、竿袋を含めてキズ・汚れなどほとんどなく、素材の劣化も来たしていないと思います。
※近年、紀州へら竿の使い方を弁えない人の手に渡って本来の美質の損なわれてしまった竿も散見されるようですが、本品はそのようなものではありません。
【付属品】口栓、竿袋(いずれも純正品)
【注意事項】
極美品と自負しておりますが、見落としている細かな瑕疵があるかもしれません。
また、工業製品ではなく、自然素材の竿という点はお含みおきください。
これらの点をご理解の上ご入札いただき、落札時にはノークレーム・ノーリターンでお願いします。
新規の方、および過去の評価の悪い方の入札はこちらの判断で削除させていただく場合があります。
【梱包・配送について】竿本体を竿袋に収納した状態でエアキャップ(プチプチ)を巻き、ボイド管または塩ビパイプに入れて発送します。
配送は「ゆうパックおてがる版」にて行います。