「カルト・ピノの頂きに君臨する一つがピーター・マイケルによるもの。」との認識は1990年台のムーランルージュより普遍。パーカー氏からは「DRCのリシュブール、若しくは成熟年のラ・ターシュを想起させる。」とも述べられます。(“remind me of ripe vintages of the DRC Richebourg or La Tache.”)
長年、ピーター・マイケル擁するピノはムーランルージュに限られました。但し全てのワインをドメーヌ・スタイル(エステイト)で手掛けたいPMにとって、ネゴシアン・スタイル(買い付け葡萄)のムーランルージュは例外的存在。対するこちらはPMにとって大きな意義を持つ悲願のエステイト。
「三大グランクリュ」が揃う「真のソノマ・コースト」こと“True Sonoma Coast”。中でも一際抜き出る随一のエリアが、マーカッサンに代表される世界最有望ピノノワールの産出源、フォートロス・シーヴュー地区(AVA)。
ファインピノの桃源郷にPMが参戦を図ります。
(※地図はクリックで拡大 ※正規エージェントWIS社が公認する本物はル・カプリスとマ・ダンスーズのみ。クロ・デュ・シエル - Clos du Ciel -は日本向け蔵出し無し)

《ピーターマイケル》 ピノノワール “ル・カプリス” フォートロスシーヴュー, ソノマコースト
■2019vtg：ワインアドヴォケイト96-97点（パーカーポイント）
現当主ポール・マイケル氏との会食で伺ったところ、各区画の「標高(350-450m)」「土壌組成」には然して大きな違いは無く、味わいを決定的に左右する「クローン(ブルゴーニュ・グランクリュの優良選抜)」に関しては寸分違わぬとのこと。
片や明白な相違点として「傾斜の角度」「畝の向き」「日照角度」「海からの距離」等が挙げられ、それが「通風の向きや強弱」に作用し味わいの違いに表されます。
以下はその概略です。
1) ル・カプリス：マ・ダンスーズとクロ・デュ・シエルの中間に位置する最も急な傾斜。他の二つに比べ海からの影響は幾分少なくやや暖かな微気候。果実味が表される「古典的なピノ」の構造
2) マ・ダンスーズ：三つの内最も北に位置し、近くを流れる川と海からの影響を強く受ける。北向きの畝もあることから日照時間も他よりはやや短い冷涼な区画。酒質は「最もフェミニン」
3) クロ・デュ・シエル：畑内の最南端セクション。三つの中で日照時間が最も長く構造は「男性的」 (蔵出輸入なし)
2006年6月に当地を訪れ、ピーター・マイケル所有の区画を目にした時以来、私のむらが待ち侘び続けた一つがPMのエステイト・ピノでした。
後年、東京でポール・マイケル氏とお会いする機会が持たれます。
1度目(2011年10月)には「プロジェクトスタートは1998年。後に様々な障壁に直面し(圧力団体の影響等)、商用生産の1stリリースは2009年」と知らされます。
「日本に出荷して下さいますよね？」と懇願し、更に散会後には正規エージェント社長を交え輸入実現の交渉に加わったりもしました。
幾らかの手応えから、メルマガでは『いつの日か...請うご期待』とも述べたものです。
ディナーをご一緒した2013年5月の再会では、半年後に発表されることとなる「史上初のRP100点ピノ2種」を含む豪華絢爛な数々を振舞って頂けました。(後に思えば凄い機会でした)
全種水平というわけにはいかなかったので3銘柄の違いを単に著せもしないでしょうが端的に申し上げますと...
上記各種プロフィールに従えば、こちらのマ・ダンスーズが最もフェミニンであるはずも、メリとハリに骨格を伴う中々力強い酒質。同年産を水平比較したワインアドヴォケイトでも「カプリスよりも豊かさとウェイトは上」と述べられます。アロマはすこぶる芳醇であり甘苦い果実を想起させる熟したタンニン、果実感には高い純度を伴います。
ちなみに会食の際、ポール・マイケル氏からオフレコ話を伺いました。当時はメディアにも伏せられていたPMの新プロジェクト…それがやがて2015年ワイン・オブ・ザ・イヤーに輝くこととなるオーパラディでした。
【品種構成】ピノノワール100%【原産地呼称】カリフォルニア州＞ソノマ郡＞ソノマ・コースト＞フォートロス・シーヴューAVA【タイプ】[赤] フルボディ【内容量】750ml

当地を象徴付ける要素として「海からの丁度良い距離」と「海抜の高さ」が挙げられます。この環境を求めどれ程の大物達が群がったことか。
画像右はフラワーズのキャンプ・ミーティング・リッジ(CMR)からの眺めです。(撮影のむら) 「遂にPMが(DRCに準ずる)ドメーヌ・ピノに着手!」とは、当地訪問を機として2006年に発信した情報でした。
CMRとほぼ等高線上の谷を隔てた向こう側に、二つのブロックが見えるでしょうか。一つは高級ピノ生産者御用達のハーシュ。一方が、マーカッサンのパーセルを含むマルティネリ一家のブルー・スライド・リッジ。「ソノマ三大グランクリュ」(マット・クレイマー)とは、これら三つにより形成され、全ては海岸山脈の尾根の頂上に広がります。
CMRに立つと視認出来る畑は5つ程に限られました。ピーター・マイケルが所有するブロックはハーシュとマーカッサン・エステイトの概ね反対側の尾根に位置しており、距離も然程離れておりません。なのに「三大グランクリュ」に含まれなかった理由とは、他でもない当時はワインのリリースが無かったが故。
3区画から成る畑の総称はシー・ビュー・ヴィンヤード。フラワーズのシー・ビュー・リッジによく似た命名も、共に「海が見える(シービュー)」ロケーションだけに。